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3.より良い内容にするために注意したいこと、すべきこと

3-1.読む相手がどこまで知っているのか、知りたいのかを考えて執筆する(180913)

編集作業をする際、読者対象が誰で、企画の目的は何なのか、ということを意識して原稿内容を編集していきます。大きくは、
A.どこまで知っているのか、知らないのか。それによってどこまで解説が必要なのか
B.どこまで知ってほしいのか、知るべきなのか。それによってどこまで解説が必要なのか
となります。
Aは前提、Bは目標、みたいなものです。

医学書の場合、単純に読者対象を分けると、医学生向け・研修医向け・一般臨床医向け・専門医向け、などが考えられます。他に追加するなら、初学者・初心者向け、があります(コメディカル向けもありますが、ここでは医師向けに絞ります)。
「それぞれの読者対象の前提はこんなものかな」「目標にあわせてここまで書かれてあると読者は満足するのかな」ということを考えながら、原稿を読んでいき、必要に応じて追加・修正などの提案をさせていただきます。

専門医向けでも初学者向けの書籍では、前提は初学者向け、目標は専門医向け、となりますので、前提を専門医向けとして書かれると、初学者が前提の知識を学べない書籍になってしまいます。

例えば、循環器科の医師(=循環器専門の医師)向けの書籍だとした場合、
A.循環器専門医向けの書籍
B.循環器科の専攻医(後期研修医)から循環器専門医向けの書籍
の2つでは、読者対象が異なります(=解説する内容に違いが出てきます)。
Aでは循環器専攻医の知識はあるという前提での解説となりますが、Bでは専攻医として知っておくべき知識の解説も必要、となります。「知っている」という前提があれば省略できる情報も、「知らない」前提なら解説する必要が出てきます
つまり、Bの書籍で「専攻医の時に知るべきこと」(=解説すべきこと)を「専門医は当然知っていることだから書く必要がない」と解説を省略されている場合、「この部分は専攻医のために解説を追加」と考えられます。
逆に、Aの書籍では「専攻医の時に知るべきこと」はすでに知っているので、解説を省略されていることがあります。
これらのさじ加減がなかなか難しいです。

病院ホームページなど一般の人向けの文章では、当然のことですが、「非医療人」という前提で執筆していただいた方がよいです。
言い過ぎかもしれませんが、医療関係者が思っているほど一般の人は病院の疾患・検査・治療などの説明を理解していない、と考えてもよいかもしれません。

読者対象と読者

amazonなどで、研修医向けの書籍のレビューに、「この本は研修医には向いているだろうが、自分には役に立たなかった」などの理由で低評価がつけられることを目にすることがあります。おそらく、ある診療科の専門医が、他科の勉強をされるのに購入されたのだと思います。研修医として知っておくべきぐらいの知識はすでに得ていて、もう少し実践に活かせる内容を期待していたのかもしれません。しかし、「研修医向け」の書籍なので物足りなかったということだと思います。
編集者としては、研修医向けの書籍が「研修医には向いている」と評価されるのは嬉しいことなのですが、「自分にはやさしすぎた」という理由で評価1などがつけられると、切なくなります。特に、書名やカバーデザインで研修医向けということが購入前に明らかにわかる書籍の場合などに、書籍の内容自体が悪いわけではないのに低評価がつけられると、、、、
研修医向けの書籍と他科を改めて勉強し実践に活かしたい人向けの書籍では、「前提」も「目標」も異なりますので(当然「コンセプト」も)、書籍を購入される際はご注意ください、という余談でした。

3-2.「具体的な説明」は何をもって具体的というのか(180913)

「具体的」という解説もなかなか難しいテーマだと思いますが、ある程度やりかたはあると思っています。

・「数値」を明記する
距離や角度、回数、個数、などの数値を明記することで具体性が出るものは数値を明記する。
「30度の角度で3~5cm押す」など。

・「例」を明記する
パターンがいくつもあるので「適宜」などとしている場合は、例をいくつか明記するだけで、「適宜」を想像しやすくなる。あるパターンの想像ができると、他のパターンも想像しやすくなる。

・「感覚」を明記する
手技などは、手に伝わる感覚を明記するだけで、よりわかりやすくなる。
「針を1cmほど進めると、プツっという感覚がある」など。

その他にも具体的な解説法はありますので、思いついたら随時追加していきます。

3-3.メインの読者は誰なのか(180913)

これは書籍や媒体のコンセプトにも関する重要なことなのですが、メインの読者・読み手が誰なのかによって企画内容や執筆内容が変わってくるということです。

3-3-1.書籍の場合

例えば、「読者対象は、研修医、医学生、看護師、看護学生」という入門書があるとします。

研修医と看護学生では知っている知識や求める知識は異なる(前述の言葉を使えば、「前提」と「目標」が異なる)ので、
「研修医がメインの読者対象で、(勉強熱心な)医学生・看護師・看護学生も読める入門書」
というのと、
「看護学生がメインの読者対象で、(改めてイチから勉強したい)研修医・医学生・看護師も読める入門書」
というのは、内容や難易度が全く異なります。

また、メインの読者対象を決めずに「研修医・医学生・看護師・看護学生みんなが同列の読者対象」とすると、どっちつかずに内容になる可能性が高くなります。

販促・宣伝は「研修医・医学生・看護師・看護学生が読者対象」とした方が読者対象へのリーチとなりますが、企画・執筆の際はメイン読者対象を決め、その読者向けにした方がより大きな成果が出ると思います。

「研修医や一般臨床医向けの〇〇診療の書籍」なども、研修医向けなのか一般臨床医向けなのかで、「前提」と「目標」が異なります。
「一般臨床医がメインの読者対象で、勉強熱心な研修医も読める書籍」なのか、「研修医がメインの読者対象で、改めてイチから勉強したい一般臨床医も読める書籍」なのかで、内容が異なります。

3-3-2.ブログの場合

書籍と異なり、ブログでは読者対象の一貫性はあまり重要ではないので、ブログのテーマを厳密に決めていない場合は、おもむくままに執筆していただいて大丈夫だと思います。

ただし、ブログがある程度まとまったら書籍化を検討したい、と思っている場合は、書籍化についての検討は初期段階ですべきです。
というのも、ブログはその時思っていることを自由に書いていることが多いと思いますので、そのまままとめても書籍として体をなさないことがほとんどだからです(タレント本などは別ですが)。

読者対象やおおまかな目次を決めてから執筆した方がよいかと思います。

3-4.言葉足らずにならないように(180919)

日本語は主語や主部がなくても大丈夫など、文脈上、言葉が足らなくても通じることができます。
「誰が」「何を」などの言葉がなくても、話している・書いている本人は伝えていることは十分伝わっていると思っています。

文章の場合は、「言葉がない部分」が「その時点より前」に書かれているからです。

しかし、文章が長すぎて「その時点より前」からかなり文字数が多くなったり、話題がいくつも出てくると、言葉がない部分が何についていっているのはわからなくなることがあります。

例えば、以下の文章があります。
私には兄がいます。千葉に住んでいます。

この場合、「兄が千葉に住んでいる」と解釈するのが一番多いと思いますが、「私は千葉に住んでいる」という意味で文を書いていることも考えられます。
「私は」ということはないでしょ、と思う人がいるかもしれませんが、実際にこのような例はあるのです。書き手は「私の紹介」を文章を分けて書いているだけなので、住んでいるのも「私」として書いています。しかし、読み手は「兄がいます」に文が続いているので住んでいるのは「兄」だと思います。
例文のような簡単な文章でも、言葉がないと文章の意味が変わって解釈されることもあります。

通常、書籍や雑誌などの紙媒体やネットの文章を読んで不明なことがあっても、書き手に確認することはできません。よって、普段話すとき以上に「言葉を省略してよいのかどうか」を考えながら書かなくてはいけません
ちなみに、上記の文章に言葉を足すとすると、「通常、読み手は書籍や・・・」と「よって、書き手は普段話すとき・・・」と、「誰が(誰は)」になります。言葉を足したほうが、ここは読み手についての話しですよ、よってからは書き手についての話しですよ、と読むに人の理解を助けることになります。

編集作業では、「この文章、主語は何をさしているのかな、、、」「目的語に相当する部分が何をさしているのかわからない、、、」というような文章のなど、「ない言葉」の追加・提案をすることがあります。

また、「簡潔に書く」ことに慣れると、長い文章の理解のために必要な言葉を省略してしまう可能性が高くなります。
文章を書いた後に客観的に読んで、自分の伝えたいことが伝わっているか、ということを確認する作業を行うと、間違って理解されることが少なくなります。

言葉足らずは日常のやりとりでも起こりがちです。
メールやLINEなので簡潔にやりとりを行う場合、言葉足らずになることが多いので、「読み手が間違った解釈をするのは書き手の書き方の問題」ぐらいに思って、簡潔だがしっかりと伝わる文章を心掛けるようにすると、文章力が上がると思います(自分にも言い聞かせながら)。