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医療者の方、特に医師は、論文や雑誌・書籍の原稿をはじめ、学会などの発表用資料、施設内の配布物、患者配布用の紙媒体、ホームページのコンテンツやブログなど、執筆する機会が多いと思います(以降、わかりやすくするため、それらをすべて「原稿」とさせていただきます)。書籍を制作する際、執筆者からいただいた原稿(=元原稿)を編集していくのですが、その編集経験の中から、原稿執筆において少し気を付けるだけで、きれいな原稿、読みやすい原稿、編集しやすい原稿になるための書き方について、複数回に分けてまとめていきます。「そんなこと当然だよ」と思われることもあるかと思いますが、結構、多いものを集めてみました。

少しの一工夫で原稿の理解度やきれいさが増しますので、これからの原稿執筆にお役立ていただければ幸いです。

 

1.見た目の細かいこと

1-1.「、」を適度につけて、読みやすい文章にする(180724)

1-1-1.「、」がない長い文章について

長い1つの文章に「、」(読点)が1つもなく読みにくい、という原稿をよくみかけます。おそらく、執筆者が書き慣れている文章のため、一気に書かれているのでしょう。編集作業では、読みやすく、また理解しやすくするために適宜「、」を入れます。
口頭で説明するときに、抑揚をつけたり、間をあけたりすることがあるかと思いますが、その抑揚や間をあける作業が、原稿では「、」になります。

1-1-2.「、」の入れる場所について

また、1つの文章が長い場合だけではなく、文章の切れ目や関係性がどうなっているのかの理解を助けるために、編集作業として「、」を入れることもあります
例えば、構造的に「A+B+C」になっている文章があるとします。

「父は今日も元気です」(父は + 今日も + 元気です)

文章の流れ上、強調したい箇所があった場合(強調した方が、あとの説明がわかりやすい場合)、この文章が、「A、B+C」なのか「A+B、C」なのかを読者が自然と理解できるように「、」を入れると、文章がわかりやすくなります。

1.「父は、今日も元気です」 (「父」を強調)
  2.「父は今日も、元気です」 (「今日」を強調)

このように「、」を入れて強調箇所をわかりやすくしたり、主部が長い場合は「ここまでが主部です」と示すように編集作業を行います。

「、」を入れる場所によって文章の理解度は変わってきますので、読み手のことを考えて「、」を挿入することをお勧めします。

その他、「ひらがながつながっている場合」「漢字がつながっている場合」なども、読みやすくするために「、」を入れます。

1-1-3.「、」は文章理解のために重要

今までの説明なんて知ってるよ、という方が大半だと思います。しかし、原稿を書いていると、ついつい「、」を入れずに書き進めてしまう、というものです。適度に「、」を入れると、読み手の理解度を助けるだけではなく、編集作業も少し軽減されるので、適度・適切な「、」をお勧めします。

逆に、「、」が入りすぎて読みづらい文章や関係性がわかりづらい文章もあります。

「父は、今日も、元気です」

この例では、文章がブツ切りになっているため読みにくいのと、「父」と「今日」どちらを強調したいのかがわかりません(文脈上、どちらも強調する必要がなければ問題ないですが)。
このような場合は、不要な「、」を削除させていただきます。

「。」(句点)も同様で、「。」がなく1文がすごい長い場合や、逆に多すぎて文章が細切れになっている場合もあります。こちらも適度に入れていただけると、助かります。

適度の考え方明確に「このぐらい」とは言いづらいことなのですが、「内容を知らない第三者の客観的な目線」として、ご自身で客観的に読んでみて、文章の読みやすさを検討してみてください。ちなみに、この第三者の客観的な目線が、編集者の目線であり、この目線により様々な編集作業を行っていきます。

1-2.改行を適度に入れて、段落の変化を示す(180724)

改行について、以下の理由で適度に入れた方がよいと思っています。
1)適度に改行がないと「文章のカタマリ」になってしまい、一瞥しただけで「読みたくない」と思われてしまう
2)改行を入れることで、話しの流れが変わったことを示す

1-2-1.「文章のカタマリ」について

改行がなく「文章のカタマリ」になった文章を用意しましたので、クリックして確認してみてください。文章がかたまってて、読みにくくなっていると思います。
「事業案内」の一部を、改行削除した文章 (←クリック。別ページに開きます)

書きあがった原稿を客観的にみて、「文章がかたまってるなー」と思う箇所があったら、強引にでも改行を入れてみてください。改行が少し入るだけでも、必ず読みやすい印象を受けます。

1-2-2.話しの流れが変わるときに改行する

元原稿をA5サイズの書籍に配置したら、1ページに段落が2つしかないことや、1ページまるまるが1つの段落、ということもあります。
これはレアケースだとしても、段落内で「さて」「そこで」などの接続語や接続詞を使用されている場合は、内容を踏まえたうえで改行することをお勧めします。
特に、「伝えたい内容が変わる」ときは、改行を入れていただいた方が、読者の理解度が増しますので、適度な改行をお勧めします。

1-2-3.改行のその他の利点

改行をするということは、文章の理解度を助けるというだけではなく、「余白を作る」という作用もあります。余白ができると、圧迫感がなくなり、読みやすい印象を受けます。
書店や学会上などで、書籍をめくって「読みにくいなー」と感じたとき、その書籍は余白が少ないデザインかもしれません

1-3.漢字にする/しない、を統一する(180731)

細かいことですが、「漢字にする/しない」を統一することも編集作業としてあります。
この作業は、極論を言えば、文章の内容や理解度に影響はなく、編集としてのプロの仕事をしてるかどうか、の作業だと思っています。ただし、「教科書」や「正しい用語を伝えたい」場合は、必要な作業になります。

各出版社や媒体などで規則みたいなものがあると思いますので、原稿を外部業者が編集する場合はその規則で修正されますが、ご自身で執筆し完成させる場合は、ご自身のルールを決めて統一する、というのがよいかと思います。

「正しい表記」は考えないとすると、

  • ~してください/~して下さい
  • ~をおこなう/~を行う/~を行なう
  • ~という/~と言う
  • あらかじめ/予め

などの一般的なものから、

  • うっ血/鬱血
  • ゆうぜい/疣贅

など、医学用語の一部または全部をひらがなにするものもあります。

漢字の表記が統一されていない理由の1つとして、「入力後の変換忘れ・変換間違い」もあるかと思いますが、「統一について特に気にしていない」が一番多いのではないでしょうか。
少しずつで結構ですので、マイルールを決めて、漢字にする/しないを統一して執筆することで、見た目が統一された文章を作ることができるようになります。

医学用語の場合は、読む対象を考えて適切な方を選んで統一した方がよいと思います。医療関係者なら正式な漢字を、一般の人向けなら難しい漢字はひらがなにする、などとなります。漢字にする場合、読みが難しい漢字にはフリガナをつけるか、カッコ()で読み方をつけるかした方がよいです。

「編集 漢字 ひらく」などで検索すると、いろいろと解説ページがリンクされていますので、お時間があるときにご覧になってください。

1-4.漢字を統一する、表記を統一する(180807)

さきほどは「漢字にする/しない」の統一でしたが、こちらは、「同じことについて漢字を統一する、表記を統一する」というものです。

1-4-1.複数の表現ができる場合

簡単な例ですと、以下のようなものです。
小児/子供/子ども/お子さん
本邦/我が国/わが国/日本
私/筆者/著者
混在するとキレイではありませんので、どれか1つに決めて統一した方がよいと思います。

1-4-2.別名や略語が混在する場合

また、別名や略語が混在している場合なども統一します。
「5ページの特別養護老人ホームと、8ページの介護老人福祉施設と、9ページの特老、12ページの施設。文言違うけど、同じものを指していると思うんだけど、、、」。
このような場合、「特別養護老人ホームで統一するけど介護老人福祉施設ということも伝えたい」と思えば、初出時に「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」として以下は「特別養護老人ホーム」にする、という表記が考えられます。
「2回目以降は略語の特老にしたい」場合は、「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設。以下、特老)」などが考えられます。
伝えたい情報がいろいろある場合は、初出時にまとめて掲載し、2回目以降はどれか1つにする、とした方が、読者にとってわかりやすい文章になります。

1-4-3.見た目が似ている・意味は厳密には異なるがそんなに意識しなくてもよい、という文言が混在する場合

その他、見た目が似ている・意味は厳密には異なるがそんなに意識しなくてもよい、という文言が混在している場合なども統一します。例えば、「エコー」「エコー図」などです。
使い分けやこだわりがあって、「エコー」と「エコー図」を使用していると感じられたときは、その意図をくみ取って編集していきます(操作はエコー、画像・映像はエコー図、と使い分けているのかな、など)。
しかし、そうではない場合はどちらかへの統一を提案します。文章の理解でいえばどちらでも問題ないと思いますが、「情報の正しさ」や「混在することで読者が迷わないようにするため」という点での編集作業となります。
「モニタ」「モニタリング」なども同様です。

「同じものは、同じ表記にする」ということは理解度のためには重要なことなのですが、コピペや変換によってつい忘れがちになってしまいます。できるだけ統一するように日ごろから心掛けることをお勧めします。

スサノオちなみに、以前、神社についての書籍を読んでいたときの話しです。
日本神話の神「スサノオ」は、「日本書紀」では素戔男尊、素戔嗚尊、「古事記」では建速須佐之男命、須佐乃袁尊などと表記するのですが、いろいろな箇所でこの4つの名称が出てきました(他の神も日本書紀と古事記では漢字が異なります)。執筆者が別々だからなのか、引用元の文章の漢字をそのまま使用したのかわかりませんが、書籍全体で考えた場合、どれか1つに統一すべきと思いながら読んでいました。当然、他の神も漢字表記はバラバラです。なお、しっかりと編集されている書籍は、初出時に「以下、須佐之男命とする」など、統一を図っておりました。

1-5.医学用語・専門用語はしっかりと表記する(180814)

編集作業をしてると、医学用語・専門用語の変更をお願いすることが多々あります。
主に、以下のようなものです。

▲以前の用語を使用している場合
・(以前)気管内挿管、(今)気管挿管
・(以前)心臓マッサージ、(今)胸骨圧迫。昔の名残で「心臓マッサージ」「心マ」と書かれているものは「胸骨圧迫」「胸骨圧迫(心臓マッサージ)」などに変更。一般向けの解説では「心臓マッサージ」の方が周知されているので「心臓マッサージ」のママにするなど、対象者にあわせて使い分けをした方がよい

▲正式な用語があるが他によく使用されている用語がある場合
・造影増強効果/増強造影効果 (「造影増強」効果を用いる)
・褥瘡/褥創 (日本褥瘡学会では、「褥瘡」を用いている)
・X線/エックス線/レントゲン (表記はX線にすることが多い。レントゲンは使用しない)

▲用語の使い分け
・エコーと超音波。混在している場合、どちらかに統一だが、エコーの方が多い
・「上部消化器内視鏡」「下部消化器内視鏡」は一般向けには「胃カメラ」「大腸カメラ」にする、など対象にあわせた表記にする
・「親指、母指、拇指」「拇指、拇趾」などの統一、使い分け。1つの原稿に、「母指、拇指、第一指」「人差し指、示指、第二指」などが混在することもあるが、内容にあわせて表記の統一をお願いしている。専門向けは「母指、示指」、一般向けは「親指、人差し指」など。解剖的に、手なのか足なのか明確にしたい場合は、「拇指、拇趾」も明確にする

専門向けの内容は、教科書ではなくも「この文章を読んで専門家や学生が勉強するので、教科書のつもりで用語はしっかり記載する」という気持ちで正確な情報を伝えるような編集を行うことが必要だと思っています。
一般向けの場合は、医学的に正確な用語よりも親しみやすい用語の方がよいと思います。

1-6.文末を「ですます」調か「である」調に統一する(180827)

文末を「~です。」「~ます。」(「ですます」調)にするか、「~である。」(「である」調)にするか、統一した方が読みやすくなります。それぞれ、イメージとして、
「ですます」調:やさしそう、親切そう、わかりやすそう、丁寧、初心者・初学者向け
「である」調:難しそう、固そう、しっかりしてそう、専門向け
などがありますので、原稿のコンセプト、読者対象などから、どちらに統一するか検討が必要です。

書籍・雑誌:専門医向けのしっかりしたものなら「である」調、初学者向け・一般向けのものなら「ですます」調など
病院ホームページ:基本は一般向けなので「ですます」調でわかりやすくする。疾患や治療の解説を、いつもの感じで「である」調でまとめていると、内容がかたくなったり、わかりにくくなることがあります。
患者配布用資料:「ですます」調でわかりやすくする。

また、全部をどちらかに統一するのではなく、一部を別の調にして変化を出す方法もあります。例えば、勉強本として「である」調で統一した文体の中に、コラムはやわらかい感じにするため「ですます」調にする、などです。講義の「である」調、休み時間の「ですます」調、のような感じです。

箇条書きなどで「体言止め」を使いますが、文章中でも体言止めを使ってメリハリをつける、という方法もあります。
例:このような時には体言止めを使います。
→ このような時に使うのが体言止め。
強調するときなどは、使うと効果的かと思います。

ちなみに、この連載は基本は「ですます」調にして、部分的に「である」調にしています。

1-7.( )の入れ方(180827)

文章の補足として( )を使うことがあるかと思います。

例えば、
「~は目を閉じながらうなずいた。その後、あの人は・・・」
という文章を、「目を閉じながら」を()内に入れて「うなずいた」の後ろに移動した文章に変更した場合、過去にいただいた原稿から、以下のような書き方のパターンが考えられます。

A.~はうなずいた。(目を閉じながら)その後、あの人は・・・
B.~はうなずいた(目を閉じながら。)その後、あの人は・・・
C.~はうなずいた(目を閉じながら。)。その後、あの人は・・・
D.~はうなずいた(目を閉じながら)。その後、あの人は・・・

A:「目を閉じながら」は「その後」にかかってしまいます。
B:「。」が(目を閉じながら)の中に入っているので、()を取ると、「うなずいたその後、」と文章がつながってしまいます。
C:「うなずいた」の文章の終わりは()の後なので、()内の「。」はあってもよいですが、ない方がすっきりします。
D:一番しっくりきます。

「当然Dでしょ」と思われるかと思いますが、A~Cもよく見かけます。文章を読んでいれば、理解を間違うことはありませんが、見た目の問題として、正しい位置に()や「。」があると、きれいな文章になります。

また、()の中に()が入る場合は、(□□(□□)□□)とせずに、〔□□(□□)□□〕と〔()〕や[()]で括ることをお勧めします。

 

1-8.出す順番を一緒にする(180827)

「出す順番を一緒にする」とはどういうことかと言うと、例えば、

「~以上のことから、①静脈麻酔薬、②筋弛緩薬、③吸入麻酔薬について解説する。」

という文章がある場合、

1.解説は上記の順番で行う
2.図表タイトルなどで3つをまとめるときは同じ順番にする

というものです。

1の場合、読み手は「この順番で解説するんだなー」と思って文章を読み続ける方が多いと思われます。その場合、順番を変えて説明された文章を見ると、「文章が抜けているな」「〇〇の説明はどこになるのかな」などと思われます。
読み手にスムーズに読んでいただくため、出てくる順番が違っている原稿の場合は、文章を理解したうえでどちらかに順番の統一をお願いしております。
書くときは順番に意味をもたせている場合が多いと思いますので(重要度や頻度など)、その意味を考えたうえでの提案となります。

2の場合は、文章が「①静脈麻酔薬②筋弛緩薬③吸入麻酔薬」という順番の場合、表タイトルは「表 静脈麻酔薬筋弛緩薬吸入麻酔薬」と文章と同じ順番にするというものです。「表 静脈麻酔薬吸入麻酔薬筋弛緩薬」などと順番が変わっていたら変更を提案します。
この場合、表中の説明も「①静脈麻酔薬、②筋弛緩薬、③吸入麻酔薬」この順番である方が読み手がスムーズに読めます。表中の順番が異なる場合も変更を提案します。

医療機関のホームページでの、診療内容や対応疾患の順番も同様です。
トップページや該当ページでの順番、上部メニューでの順番、サイドバーでの順番など、読み手がスムーズが読めるように順番を統一することは重要になります。
簡単な例ですと、「けが・やけど」と「やけど・けが」があればどちらかに統一、などです。

私は、何かしら「順番で並んでいる表記」が出てきたら、

・別のところで同じ表記をしている箇所があるのか、ないのか。ある場合、順番はあっているのか
・解説する場合、順番通りの解説になっているのか

などが気になってしまいます。

 

おまけに、上記のことを踏まえて、順番があってない文章を書いてみます。

順番があってない例

栃木県には多くの温泉があり、鬼怒川温泉、湯西川温泉、日光湯元温泉、塩原温泉郷、那須湯本温泉、那須温泉郷などが有名です。それぞれについて特徴を表にまとめてみました。

温泉 特徴
塩原温泉郷 多くの文豪たちも愛した伝統の温泉
日光湯元温泉 湯ノ湖畔に湧き、レジャースポットとしても人気
湯西川温泉 湯西川の渓流に宿が寄り添う、山あいの温泉地
鬼怒川温泉 渓谷、温泉、史跡、テーマパークと見どころ満載
那須湯本 白濁した硫黄分を含む温泉は、美肌の湯として女性に人気
那須温泉郷 豊富な源泉から個性に富んだ湯が湧くリゾート温泉地

(「BIGLOBE温泉」より)