編集者からみた、原稿執筆の一工夫:3-1.読む相手がどこまで知っているのか、知りたいのかを考えて執筆する

編集作業をする際、読者対象が誰で、企画の目的は何なのか、ということを意識して原稿内容を編集していきます。大きくは、
A.どこまで知っているのか、知らないのか。それによってどこまで解説が必要なのか
B.どこまで知ってほしいのか、知るべきなのか。それによってどこまで解説が必要なのか
となります。
Aは前提、Bは目標、みたいなものです。

医学書の場合、単純に読者対象を分けると、医学生向け・研修医向け・一般臨床医向け・専門医向け、などが考えられます。他に追加するなら、初学者・初心者向け、があります(コメディカル向けもありますが、ここでは医師向けに絞ります)。
「それぞれの読者対象の前提はこんなものかな」「目標にあわせてここまで書かれてあると読者は満足するのかな」ということを考えながら、原稿を読んでいき、必要に応じて追加・修正などの提案をさせていただきます。

専門医向けでも初学者向けの書籍では、前提は初学者向け、目標は専門医向け、となりますので、前提を専門医向けとして書かれると、初学者が前提の知識を学べない書籍になってしまいます。

例えば、循環器科の医師(=循環器専門の医師)向けの書籍だとした場合、
A.循環器専門医向けの書籍
B.循環器科の専攻医(後期研修医)から循環器専門医向けの書籍
の2つでは、読者対象が異なります(=解説する内容に違いが出てきます)。
Aでは循環器専攻医の知識はあるという前提での解説となりますが、Bでは専攻医として知っておくべき知識の解説も必要、となります。「知っている」という前提があれば省略できる情報も、「知らない」前提なら解説する必要が出てきます
つまり、Bの書籍で「専攻医の時に知るべきこと」(=解説すべきこと)を「専門医は当然知っていることだから書く必要がない」と解説を省略されている場合、「この部分は専攻医のために解説を追加」と考えられます。
逆に、Aの書籍では「専攻医の時に知るべきこと」はすでに知っているので、解説を省略されていることがあります。
これらのさじ加減がなかなか難しいです。

病院ホームページなど一般の人向けの文章では、当然のことですが、「非医療人」という前提で執筆していただいた方がよいです。
言い過ぎかもしれませんが、医療関係者が思っているほど一般の人は病院の疾患・検査・治療などの説明を理解していない、と考えてもよいかもしれません。

読者対象と読者

amazonなどで、研修医向けの書籍のレビューに、「この本は研修医には向いているだろうが、自分には役に立たなかった」などの理由で低評価がつけられることを目にすることがあります。おそらく、ある診療科の専門医が、他科の勉強をされるのに購入されたのだと思います。研修医として知っておくべきぐらいの知識はすでに得ていて、もう少し実践に活かせる内容を期待していたのかもしれません。しかし、「研修医向け」の書籍なので物足りなかったということだと思います。
編集者としては、研修医向けの書籍が「研修医には向いている」と評価されるのは嬉しいことなのですが、「自分にはやさしすぎた」という理由で評価1などがつけられると、切なくなります。特に、書名やカバーデザインで研修医向けということが購入前に明らかにわかる書籍の場合などに、書籍の内容自体が悪いわけではないのに低評価がつけられると、、、、
研修医向けの書籍と他科を改めて勉強し実践に活かしたい人向けの書籍では、「前提」も「目標」も異なりますので(当然「コンセプト」も)、書籍を購入される際はご注意ください、という余談でした。