医学書の未来は明るいのか

以前、「医学書の未来は明るいと思いますか」と聞かれたことがありました。

日頃から、医学書専門出版社と一般書出版社との違いや、医学書の企画戦略などに考えていたことがありましたので、思っていることを話しました。今回、考えをまとめるよい機会だと思い、その時に話した内容やその他にも思っていることを「医学書の未来は明るいのか」として簡単にまとめてみたいと思います。

医学書の未来は…

出版不況と言われていますが医学書は一般書と比べれば不況に強い分野です。読者対象は勉強熱心な方が多く(=購買意欲が高く)、かつ、単価も高い(=一般書より儲けが出やすい)ので、ちゃんとした書籍を発行すれば、ある程度の売り上げを見込めるからです。
一般書のように一冊で大当たりする本は少ないですが、大外れする本も少ないです。
しかし、一般書ほどではないにしても、医学書も売り上げは減ってきています。

以前、大学の生協の方にお話しを伺ったところ、「医学生が昔に比べて書籍を買わなくなった」とのことです。インターネットで情報を得られることが大きな理由かと思います。
書籍を買わない世代が医者や医療従事者になってたくさん書籍を買うかというと、それはあまり期待できないと思っています。

(余談ですが、「自炊」が賑わったころは、自炊で書籍の売り上げが落ちるのではと医学書業界も戦々恐々としていましたが、結果としてあまり影響がないようでした)

書籍を買わない世代が増えてくると、全体的な売上部数は減ってしまいます。
売上部数が減るということは、医学書の未来は明るくない、となってしまいます。

しかし、「書籍」という分野で一般書と比較すると、医学書はまだ売上減の割合は少ないので、その点では、(一般書と比較すると)医学書の未来は明るい、とも考えられます。

結論としては、今後、医学書全体で売上が増えることを期待するのは難しいですが、大きく減少することはないかと思うので、医学書の未来は明るくはないが暗くもない、といったところでしょうか。

重要なことは、今後、各出版社がどのような戦略で売上を伸ばすか、生き残りをかけて攻めるか、ということになります。

ちなみに、近年、医学書の電子書籍が増えてきていますが、紙の書籍を買う代わりに電子の書籍を買っていると思われるので、電子書籍が売れているので書籍全体の売れ行きが上がる、というものでもないかと思います。

出版社の競争

医学書を発行する出版社ですが、少しですが増えてきています。しかも、発行点数は少ないですが売れ行きの良い書籍を発行しています。
出版社が増えると、当然、企業間競争が起こります。

新規の出版社の売上が伸びると、既存の出版社の売上に影響します。
既存の出版社が新規分野に参入すると、その分野で多く売上を上げていた出版社の売上に影響します。

読者側としては、「●●社が▲▲の分野に多く出版してきた」「▲▲学会に●●社の書籍が多く出てきた」などの視点で見ると、面白いかもしれません。出版社の戦いが起こり始めています。
逆に発行点数が少なくなってきてる場合もあります。

また、前述のように書籍を買わない世代が増えてきていますので、売上を増やすには、
・売れる本を出す(言うは簡単だが実行するのは難しい)
・単価を上げる(類書との関係があるので、安易に上げられない)
・発行点数を増やす
などが考えられます。
発行点数を増やすには、社内バッティングをしないように分野を広げる必要があります(人的問題も重要ですが、ここでは省略)。
いくつかの決まった分野のみを発行するのか、分野を広げるのか。出版社の攻め所・守り所です。

今後、新規出版社は発行点数や分野を増やしていき、既存の出版社は分野を広げていくと思われるので、さらに出版社間の競争が激しくなっていくのではないでしょうか。

数年後、「この分野は△△社が強い(多く発行している)」という図式が変わっている分野があるかもしれません。明るくなった出版社、暗くなった出版社がそこにいます。

 

その他、途中まで書いていたものがあるのですが、全体的に長くなるのと、本原稿のテーマとは少しずれるので、別の機会にまとめます。